プロジェクトニュース
2021年03月29日
【後編】対談企画「共通する思い─障害、福祉のイメージ、世の中を変える!」
現在出資者募集中(2021年3月31日募集終了)の放課後等デイサービス「HEARTY」活動応援プロジェクト。
発達障がいは目には見えない障がいであるがゆえに人に理解されにくいため、本人や家族が日々の生活の中で辛い思いをすることが少なくありません。このプロジェクトでは、子どもも家族も安心して過ごせる社会づくりを目指します。
障害の有無に限らず、そもそも障害や福祉って概念はもういらない。
「ひとりひとりがそれでいい」って思える世の中に。
今回は、ご自身のお子さんが発達障がいを抱えていることをきっかけに放課後等デイサービス「HEARTY」を立ち上げ、取り組みを進める北川美紀さんと、「HEARTY」の立ち上げにも関わられた、株式会社とっとリンク代表、放課後等デイサービス「みらい教室」を展開する“福祉業界のオシャレ番長“平林景さんのオンライン対談の様子【後編】をお届けします。【前編】はこちら。
親御さんとお子さんの変化
──お二人が施設を開設されたころと現在とを比べて、福祉業界が変わってきたと思うことはありますか。
北川:開所しようと思ったのは3〜4年前で、開所したのが約1年前の2020年ですが、それぞれ子どもたちを取り巻く状況や事情も変わってきていると思います。
本当に志や思いがないと、ビジネスとして持たないという状況になってきていて。
子どもたちを取り巻く環境では、コロナで親御さんや子どもたちもすごく戸惑ったし、それに翻弄された1年だった。
平林:親御さんは、かなり気にされて昨年2020年の4月ごろは来られる方は半分くらいに減りました。今はだいぶ落ち着いて普通にみなさん来られるようになりましたけれど。
コロナの状況も報酬面のことも、世の中に対して覚悟を聞かれているような気がします。ここで踏ん張れるか踏ん張れないか。
──不正受給問題に関してはいかがでしょうか。一部の運営者が不正で処分を受けて、放課後デイ自体が変な目で見られているような状況もありますが。
北川:ついこの間も結構大きな不正受給の摘発、指定取り消しが2件京都でありました。
新聞社さんの放課後デイや福祉業界に対する目も結構冷めてしまっているというか、今まで「おしゃれに楽しく子どもたちを元気にするための」と言ってくれていた人たちも、「結局放デイってそうだよね」というところに落ち着くのがすごく嫌で。
平林:放デイとプラスアルファでいろんな活動していると、そこが帳消しになるというか、「そういうところでもいろいろちゃんとやっているんだったら、ここはちゃんとやっているよね」みたいな見方をしてくれやすい部分はあるのかな。
北川:平林さんのブランディングもだし、教室としてのブランディングも取り組みとして対外的に発信していって、ちゃんと魅せるっていうことですね。
平林:うんうん、隠さずにっていうところ。
北川:そうですよね、まじめにやっていますっていう声を上げ続けるしかできないし、できる限りの評価結果を公表したり、法律を守りながらやるというのはもちろんですけど、プラスアルファも自分たちのブランディングでイメージを良くしていくとか、悪いイメージを払拭するっていうのをするしかない、今は。
まじめにやっているところが苦しくなっていくような変な矛盾が生まれているので、そこは世の中に声を上げ続けたいですよね、わたしたちも。必ず必要なサービスなので。
何が困るって、業者さんももちろんだけど、関係する取引先さんとか、本当にしんどいのは、親御さんとお子さんですよね。
──暗いイメージのする福祉業界というところに関しては、放課後デイを始められてから何か変わったところはありますか。
平林:不登校のお子さんが、通い始めてから突然明日から学校に行くわ!と言い始めて行かれたり。
宿題でLD(学習障害)を抱えている子が、親も学校もそれに気付いてあげられていなくて、毎日3時間親子でけんかしながら泣きながら宿題をされていたご家庭がありましたが、書きが苦手なお子さんの書き取りを減らして他の読解だとかを増やすと、家庭内での揉め事が減った部分と、自己肯定感をさんざん傷つけられてきたので自分に自信が持てたりとか。
来られたときの親子の沈んだ顔が全く見られなくなりましたね。そういったような笑顔が増えたのは本当に数多く見てきたので、やってよかったとすごく思いましたね。
北川:教室も入ってきたら最初びっくりされませんか。
平林:最初結構泣く方もいらっしゃるんですよ。
これまで通わせたい施設を探したけれど全くなくて、薄暗いところで子どもがやらないといけないと思うと不便でならなくてと思っていた方が、「こんなところまじで待ってたんですよ!」と言ってこれまでの苦労があふれて感極まって泣かれた方もいらっしゃいました。
北川:お子さんの支援と言っているけれど、お母さんもやっぱり支援してほしい方もいっぱいいるし、ただただ寄り添って話を聞いてくれるだけでもいいからこういう場所を待っていたとか、心から自分がこういうところにいてもいいんだと思える場所で、お母さんが話を聞いてほしいというのをすごく感じますよね。
平林:これは強烈ですね。親御さんの方が抱えているものって大きいなと。子どもさんは意外とそんな困ってないけどみたいなことも多いんですよね。
北川:わたしも経験者なので、今までいろんな施設を見てきた中で、色が少ないとか、施設自体が古くて汚いところも多かったりとか、なんか暗かったりとか重苦しい感じで、こういうことの連続がたぶん福祉業界全体のイメージを下げてしまっているんじゃないかとずっと思っていて。
なので、平林さんのような人と一緒に業界のイメージを刷新したかったし、こうやって活動をしている人たちがいっぱいいると知って励みになったし、HEARTYに来てくれるお母さんたちも、「こういうところを待ってました!」って全く一緒です。「放課後デイこれでいいんですか?」みたいな方もいらっしゃって(笑)。
いい意味で固定概念を覆す取り組みをこれからも続けていきたいなと考えています。
お母さんたちの支援も含めてこういう色にしてますっていうのはありますよね。
偏見のある世の中に、わたしたちの世代でけりをつける
──これからへの意気込みと、記事に関心をお持ちいただいたみなさまへメッセージをお願いします。
平林:日本障がい者ファッション協会というのを一般社団で立ち上げさせていただいて。
立ち上げたきっかけは、車イスの方がパリコレでランウェイしたことがないというお話を聞いて、障害に対する偏見もあるし、着座した状態でファッションは成り立たないという偏見もあるし、なにより海外で長い歴史のあるところの中で、そういったものが実現できていないというのは、世界的にも偏見がまだまだ残っているんだなっていう部分もありました。
それをまず一回ぶち壊すことによって、障害っていう概念や位置付け、偏見がなくなるんじゃないかと思って、車イスでパリコレをランウェイするというプロジェクトを立ち上げるとともに協会を立ち上げました。
そうこうしているうちに、車イスの方が履きやすい服ってなんだろうというところになって、巻きスカートやったらええんちゃうかとなって、大学教授の方とかともディスカッションしながら作ったのが、『bottom’all(ボトモール)』という名前の履き物だったんです。
「Bottom」と「All」の造語で、障害があってもなくても、男性でも女性でも、年を取っていても若くても履けるというブランドを立ち上げることになってしまって。
『bottom’all』は、市長8人くらいに履いていただいて、大阪府と茨木市も後援についていただいて、面白い方向に行くかもしれへんなというところでやっております。
北川:すごい。でも、パリコレに出ることが平林さんの目標じゃないですよね。
平林:あー、全然ないですね。
ひとつの通過点というか、そもそもそこが目的じゃなくて僕たちはやっぱり、「自分たちの次の世代に障害っていうものに対する偏見のある世の中を僕らの世代でけりをつける」っていうのがそもそもの目的なので。
やり方のひとつとして、パリコレを通して、障害者ってめちゃくちゃかっこいいやんみたいな、逆に車イス乗りたいわとか、車イスのその服ほしいわというところまで持っていって初めて、いろんな意味でユニバーサルになってくるのかなと思っています。
北川:平林さんにとってやっぱり誰もやったことないというのはキーワードで、それめちゃくちゃ大好物でしょ?
平林:いやもうお互い大好物でしょこれ。笑
北川:やらないのが普通とか、考えたこともないっていうことをわたしたちは生み出して行かないといけないっていうポジションにいるので、「福祉とは」とか「障害とは」とかっていう概念は全くいらなくて、本当に次世代に何を残せるかですよね。
マジョリティとかマイノリティとかももういらなくて、「ひとりひとりがひとりひとりで最高なんだ」、「そういう人なんだ」っていうのが、普通に認められる世の中であらなければならないし、そうじゃないと日本は滅びていくと思います。
すごい才能や宝物を持った子どもたちなんですよ。そんな障害者と言われる方々が、別に何の悪いことをしたわけでもなく、本当に素晴らしい才能を持った方々なので、どんどん世の中のパワーになっていかなければならない人たちです。
平林:そうですね、変な人は褒め言葉だって認識をした方がいいですよね。
北川:あ、そうそう、変わってるねとか言われたらすごいウキウキしません?
平林:最高の褒め言葉です、もうそれは。
北川:変わってるって最高だし、本当にひとりひとりがそれでいいって思える世の中にしていくっていうのが、わたしたちの目標ですよね。
HEARTYはひとつのツールでしかなくて、このオープンがゴールではない。
ここから声を上げるために、ここに子どもたちが帰ってこられるように、安心基地になれるように作っただけであって、ここから世の中に羽ばたかせないといけないので、ここからです。
今から世の中を変えていくっていうのがわたしたちの最終目標です。